患者さんが安全で快適に手術を受けられるように麻酔管理をサポートするのが仕事
全身麻酔は薬剤や処置に伴う副作用や合併症を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
まず気をつけたいのは気道確保です。全身麻酔は呼吸が弱くなるため、人工呼吸などで呼吸を管理します。その際に気道確保を行うわけですが、特殊な器具を用いるため歯や口腔の損傷、嗄声、咽頭喉頭炎、誤嚥性肺炎、喘息発作などの副作用や合併症が起こる可能性があります。また、気道・呼吸器系の合併症として、麻酔導入時の気道確保困難、麻酔覚醒後の上気道閉塞や無呼吸などによる低酸素血症、高二酸化炭素血症、気胸、無気肺などのリスクもあります。特に脳は低酸素に弱く、元に戻らないような障害をもたらす可能性もあるので注意しなければなりません。
さらに、血圧が下がると脳梗塞や心筋虚血、腎不全などを起こしたり、麻酔が不十分で予想外に血圧が上昇し脳出血や心筋梗塞を起こしたりする危険性もあります。
血圧だけでなく体温にも注意が必要です。低体温になると麻酔の覚醒を遅らせたり、震えによる酸素消費量を増加させたりするだけでなく、創傷感染、心筋障害、血液凝固異常などの重篤な状態を引き起こす可能性があります。
抗生物質や筋弛緩剤が原因でアレルギー症状を起こすこともあります。アレルギー症状は、麻酔中に重篤な呼吸器症状や循環器症状に発展することがあるので気をつけなければなりません。
手術室では患者さんのケア、麻酔科医のサポート、執刀医の補助など様々な役割を担っていますが、麻酔や手術が進み、医療安全が保たれるように調整するのが看護師の仕事です。全身麻酔中は、呼吸や循環などの生命維持管理は麻酔科医が担当しますが、麻酔科医だけで患者さんの四肢を常に監視することは困難です。挿管や蘇生、循環薬の調剤・投与など、看護師が直接治療に携わる場面も多く、チームの一員として患者さんの全身を管理します。
麻酔前は準備・確認を徹底し、安全に麻酔が行えるようにします。麻酔薬は微量でも呼吸や循環を乱す危険な薬物です。希釈ミスや投与ミスを防ぐために薬剤シリンジラベルを貼付したりダブルチェックしたりしながら安全を確認しましょう。また、患者さんの不安を軽減し快適に眠れるよう、声をかけたり環境を整えたりもします。
麻酔中は血圧、尿量、体温、呼吸状態などの基本的なバイタルサインの推移や、併存疾患ごとの観察などを麻酔科医とともに行います。患者さんの異変にいち早く気づけるよう、常にアンテナを張っていなければなりません。
麻酔後は麻酔効果の残存による呼吸器関連の事故が起こりやすい時期です。病室に戻る前に通常のバイタルサイン測定に加えて、いびきや無呼吸などの上気道閉塞の有無、呼吸数や呼吸深度などの呼吸状態を目視で確認します。手術部位の痛みの程度や吐き気の有無も確認して、場合によっては麻酔科医に相談しながら鎮痛剤や制吐剤を投与します。